「よぉ、俺2号」

声がしたほうに顔を向けば、そこには俺と瓜二つの俺がいた。
ドッペルゲンガー。それが、彼に与えるべき名前だ。
2008年、秋も終わりが近づくある日。俺はそいつとノロノロ喋っていた。

「なんだよ偽者」

今のは俺の言葉。

「だから警戒しなくていいっての。ペルソナとかシャドウじゃないんだからさー」

こっちが偽者の言葉。
以下まぎらわしいので大体想像してください。

「まあ、借りてちょっと遊んだけど、……ってそれ関係ねえよ」
「話逸らせなかった……ちくしょう」
「でさ、何か用があるのか?」
「そうそう、用事っていうか、のろけに来たんだよ」
「の……ろけ?」
「おう。だって人前に出たってスルーされるし、それ以外の奴らのほうがよっぽど怖いし」
「怪奇現象に強さとかあるのかよ……」
「あるある。超ある」

俺とトーンの違う声でにやにや笑いながらあいつは話を続けていった。

「もうな、こう、格差社会なんだよ。俺なんかダメなの。都市伝説レベルじゃないと今はダメ」
「……例えば」
「コインロッカーの赤ちゃんとか、キルロイもだし、怪人アンサーとかも強い」
「確かに聞いたことがあるな」
「あとは人にして都市伝説築いちゃうやつとかも強い」
「誰だよ」
「今はいないから分かんねーよ。俺だって知らないことはあるから」
「その基準って何」
「『お前が知らないこと』」

要するに、俺は『そういう世界』を知ってるとでもいいたいのかもしれない。
でもあいつは俺だ。俺でありながら独立した俺として言葉を発している。変な感じだ。

「まあそれだからどっかの生徒のパンツの色をお前が知ってたら、俺は言いふらして回れるぞ」
「回るな」
「冗談だけど」
「冗談に聞こえねえ」

瞳の色が少し淡いだけのあいつはとん、と自分のこめかみを叩いた。

「あはは、つまりさ、お前が何か考えてたらこっちにはお見通しなの」

その目はちっとも笑っていなかった。
何となくは分かっているのだろう。俺はこいつに消えてほしいと願っている。苦痛なのかもしれないけど、俺が本物なのだから大人しく受け入れてほしい。

「悪いけど、俺消えねーからな。お前が願っていても消えるつもりなんか毛頭ない」
「知ってるよ」
「ダイキ、あんたが今のまま……ただのだんまり少年でいる限り、俺は消えない、つーか殺す」
「分かってる」
「『シャドウ』、だっけな。お前が遊んでたゲームに出るの」
「ああ」
「モロあれだよ俺。俺を頭ごなしに否定してだんまり少年でクール気取りで」
「俺はそんな奴じゃない」
「だから俺は殺したいって言ったの」

またにやにやしてるあいつがいる。あーうざい。消えてくれ。

「だから消えないっての」
「うっさい」
「ほら、今は部活の時間なんだろ。ここ出ないと悲惨な目にあうかんなー」
「……ああ」
「じゃ、またあとで」
「会いたくないってば」

一瞬、俺とあいつが全く同じ体勢をとって……あいつはまた消えた。